佐藤さんがガラスの彫刻家・ブラストマイスターになったのは、ひょんなことから。何の見通しもなく、突然、十七年間のサラリーマン生活に終止符を打ったのは七年前。38歳のときだった。
ある日、東京ドームで開催されていた「独立開業セミナー」に行ったのだそう。
「各企業が商品を展示し、社員が説明していました。なかでも、ガラスを彫る、ということにとても興味を覚えて......」
さっそく技術習得のため、江東区にある工芸教室へ、四ヵ月間通ったそう。実際にやってみると、硬いと思っていたガラスがいとも簡単に彫れていく。このことがおもしろくなって、完全にハマってしまったのだ。
「独身なので時間は十分ありましたから、人の何倍も作って技術を覚えました」
さまざまな可能性を秘めたサンドブラストによるガラス彫刻を多くの人に知ってほしいと、スタジオ兼工房を2003年蕨市に設立。現在、教室の生徒は、七割が男性で、ほとんどがサラリーマンだそう。
「一回もやめようと思ったことないので、この仕事が向いているのかもしれません」と、好きな道を仕事にできた充実感が、佐藤さんのやさしい目から溢れていた。
※サンドブラスとは、圧縮空気で砂を吹きつけて彫刻する技術のこと。 |